IZO
2008年2月14日 シアターBRAVA!
劇団新感線 いのうえ歌舞伎☆號 IZO
作:青木豪
演出:いのうえひでのり
ミツ:戸田恵梨香
島村源兵衛:千葉哲也
虎之助:木場勝己
幕末の土佐藩、武市半平太たちは尊王攘夷を掲げ、幕府を倒すべく、土佐勤王党を立ち上げる。
江戸へ京へと活動の場を広げ、天誅(天罰の名目をもって人を殺めること。元は天に代わって誅伐を下す)と称して佐幕派の人間を暗殺していた。
武市を慕って、土佐からついてきた以蔵は剣の腕はあるものの政治についてはさっぱりで、ただただ武市の命に従って、人を殺めていた。
京で土佐で馴染みだった坂本龍馬と出会う以蔵。
坂本は勝海舟が説く、幕府を倒し侍も平民もない国を造り、国力を高め開国し夷狄から国を守る、という考え方に傾倒していた。
武市は土佐藩主山内容堂は尊王攘夷派であると信じ、活動を続ける。
公家である姉小路公知をたき付けて攘夷を進めようとするが、公知は勝とともに江戸湾岸の視察などをしている内に説得され、開国派へと傾いてしまう。
攘夷派先鋒の頼みの綱としていた公知が寝返ってしまい、悲嘆にくれる武市。
が、その暗殺は何者かによる策略で、身に覚えの無い新兵衛は取り調べ中に自害してしまう。
そして、薩摩・会津による八月十八日の政変が起こり、長州藩は京を追われ、佐幕派による粛清により、尊王攘夷派は劣勢となる。
武市たち土佐勤王党も次々ととらえられ、土佐へと返され、京における天誅について詰問され拷問を受ける。
武市たちはすべての罪を京に残った以蔵に押し付けようとするが、以蔵もとらえれ、土佐へと返される。
慕っていた武市にただ利用されていただけだったことを知る以蔵はすべてを語り、さらし首となり、武市もまた切腹する。
こうして、土佐勤王党は壊滅。
尊王攘夷派の勢いは一旦衰え、佐幕派が優勢になったかに見えた。
が、時代は動き、幕府の世は終わろうとしていた。
あらすじっつーか、時代背景は多分、大体こんな感じ。
この背景がないとなんとなくお話を追うのはちょっと難しいかもしれません。
ワタクシも新選組!で付け焼き刃で覚えた知識にて、細かいところがちがーう!かもなのですが、組!でたたき込んだ、土佐・長州・薩摩・勝・龍馬の関係図←これも付け焼き刃だけど のお陰でなんとかついていくことが出来ました。
いやー、演技するゴウ森田が大好きなので、堪能しました。
動きも土佐弁もよかった。台詞が自然で、でもって、あの小ささがまた今回の以蔵にあっててよかった。
あと、池鉄さんの龍馬がよかった。
すごい人なんだけど、気さくで、でも抜け目ない感じがよかった。
もしかして、初生池鉄だったのかしら?
よかったー。
あと、新感線の面々が要所要所イイ感じで脇を占めてるのもよかったです。
公知ちゃんに勝さんに…。よかったなあ。
実はちゃんとキャストを確認せずに見に行ったもんで、武市が田辺さんだと途中で気付きビックリ。
これまた生田辺さんで素敵でした。
いやーホントいい舞台でしたよー。
以蔵はただ大好きで尊敬する武市に褒められたい一心だけで動いてるのだけど、武市の方は打算的で以蔵の思慕につけこんで利用していただけだった、が、そんな武市も結局は誰かに利用されていただけだったという悲しいお話なのです。
なんにもないがじゃ。
と、愛するミツまで失って、己の今までのことはなんだったのかと失望する以蔵。
ミツって実は勝・龍馬的考えの人で、侍とかそういう身分なんか意味がないと思ってたんじゃないかと思うのです。でも、以蔵は剣でしか武市に褒められるところがなくて、剣にすがってしまった。
土佐に帰って容堂に詰問されたときに、天に命ぜられて天誅を下したと以蔵が言います。
自分の天は武市だった、そんな武市にもさらに上の天がある。みんな天に命ぜられて行動したけど、実は天は動くもの。本当に正しいものはどこにあるのか…。という以蔵の言葉に武市は自分もまた天に躍らされたことに気付きます。
容堂が幕府にすがるのをみて、その幕府の世も動いていき、どうなるかはわからないと言い残して切腹します。
尊王攘夷だなんだかんだといいながらも、容堂から褒められ武士の位が上がると喜んだ武市は、そんな身分のない国を作ろうと、さらに先の世の中のことを考える勝や龍馬にはかなわないのかもしれません。
以蔵は最期にさらに先があることに気付きかけたところで死んでしまったのかも。
ただ武市に褒められたかっただけなのに、がんばっても、武市は、剣の腕も立ち政情も読める薩摩の田中新兵衛のことを重宝する。もっともっとがんばらねばと、剣に走る以蔵は結局それで身を滅ぼす。
公知殺害については史実でも田中の自害によって真実は謎なのですが、今回は以蔵が田中にその罪を着せるために田中の剣を盗み、それを利用して公知を殺したことになっています。
以蔵の嫉妬で田中は志し半ばで死んでしまい、以蔵もまたそこから転がるように落ちていく。
後半は悲しいことだらけでした。
席が端っこのほうだったので、花道が近く、役者さんを間近で見れてラッキーでした。
たまーに、幕陰でスタンバイする役者さんの声とか聴こえたりして(笑)
コンサでスマのおじちゃんを見たときも、ちっちゃい!とか思ったんですけど、それ以上にゴウ森田は小さくてビックリ。
でも、ホントに今回の以蔵はその小ささがよかったです。
小さくても剣を持てば強く誰にも負けない。
政情のことはわからないけれど、本当に武市のことが大好きで、役に立って褒められたい、それだけの人。
なのに、武市にその思慕を利用され、政情のことがわからんとちょっと見下され…、それでも嫌われまいとする以蔵が健気でもう…。
龍馬と馴染みということで、京であったときの龍馬と以蔵のきゃっきゃした感じは可愛かったです。
妙に2人とかピッタリあってて、可愛かった。
龍馬の考えは先に先に進んでて、以蔵は理解しがたいものだったんだけど、実は身近にいたミツと龍馬の言ってることは同じ方向に向いていて、でも、身分がない「侍」でない自分が想像しがたくて。
そりゃ、今まで剣だけで生きてきた以蔵だから、刀を取り上げられたら一体自分の取り柄はなんなのか…ってなるでしょう。
その辺、以蔵も武市も「侍」から離れられずに死んでしまったのかも。
最期に討ち首になる前に囚われてとぼとぼと歩く後ろ姿の小ささが本当によかったです。
その場面見て、小さくてよかった!って思いました。
もともといのうえさん演出大好きだし、今回の話も自分のツボにドンピシャでよかったよかったしかないんですが、池鉄さんもよかった。
クスっと笑わせることが多くて、でも、ちゃんと龍馬らしかった。
先へ先へと考えが進んでる龍馬らしい、変わり者ぶりが発揮されてました。
池鉄!じゃなくて、龍馬!って感じで、ちゃんと龍馬でした。
粟根さんの勝も勝らしかった(笑)
粟根さんの理屈っぽい感じがピッタリでした。出番は2シーンくらいなんだけど。
あと、公知ちゃん!ビバ!右近さん!
出てくるだけでおもしろい。重要人物のハズなのに軽かった(笑)
西岡徳馬さんの容堂はどっしりとしてて、抜け目ない感じでした。
あと、木場さん!
町で食堂をやってるんだけど、なんかただの町人じゃない感じがしました。
ミツの戸田さんもよかったです。デスノのミサミサのイメージしかなかったんですが、初舞台のはずなんだけど、よかったです。
以蔵のことが好きなんだけど素直じゃないとことか。
まだ、以蔵が完全に人斬り以蔵になる前の以蔵とミツの場面なんて、すっごい可愛かった。
悲恋に終わるんだけど、きっとあの世では2人は結ばれたんじゃないかなあ。
あの世に士農工商はないでしょうから。
荒神が見たかったーと思いました。
また違ったゴウ森田が見れたのかしら。
ミクロなチンピラ・ゴウ森田が好きなワタクシには今回の以蔵はどストライクでした。
可愛いよ、以蔵。素敵だよ、以蔵。
もう1回みたいくらいなんですが…ムリだろうなあ…。