三文オペラ
音楽劇 「三文オペラ」
2007年11月09日(金) 兵庫県立芸術センター中ホール
[作] ベルトルト・ブレヒト
[音楽] クルト・ヴァイル
[翻訳] 酒寄進一
[演出] 白井晃
[音楽監督] 三宅純
[歌詞] ROLLY
メッキ・メッサー 吉田栄作
ポリー・ピーチャム 篠原ともえ
ジェニー ROLLY
ルーシー 猫背椿
シーリア・ピーチャム 銀粉蝶
ジョナサン・J・ピーチャム 大谷亮介
タイガー・ブラウン 佐藤正宏
窃盗団のボス・メッキは盗む殺す犯すと悪の限りを尽くす大悪党。でも、軍隊で一緒だった親友タイガーが街の警視総監なので好き放題。
そんなメッキがふと知りあったポリーに惚れて、出会って1週間で結婚してしまいます。
ところがポリーはメッキたちと対立するホームレス産業「ハロー・ホームレス社」社長ピーチャムの一人娘。
金持ちと結婚させて老後の保険にしようとした一人娘を取られたピーチャムはなんとかしてメッキを陥れようとメッキの情婦だったジェニーを抱き込んで逮捕させます。
監獄に入れられたメッキだったんですが、そこに現れたタイガーの娘ルーシーとポリーのケンカに乗じてまんまと脱走。
メッキは、ポリーと結婚しながらもルーシーにも手をつけていたのでした。
脱獄のために利用された2人は一瞬意気投合、メッキの無事を祈ったものの、またもやジェニーの裏切りでメッキは逮捕されてしまいます。
タイガーはメッキを助けようとしますが、ピーチャムはメッキを処刑しなければ、浮浪者を集めてデモ行進して、まもなく行われる新総督の就任パレードをめちゃくちゃにしてやると脅され、なくなくメッキを処刑することに。
ところが!
処刑寸前に新総督就任の際の特赦でメッキは釈放、しかもお金と家まで手に入れてしまうのでした。
工エエェェ(´д`)ェェェエエ工工
っていう衝撃のラスト。
世の中そんなもんなのさーっていうヒネクレラスト。
すごいストーリーでした。
出だしはローリーのメッキ・メッサーのテーマから始まるのですが、正直、それ聴いた時点では「うわー、ワタシこの世界についていけるのかしら…」と思いました。
それくらい、メロディが独特で聞きなれない音楽だったんです。
この調子でオペラってどうなんだろう…なんて思ってたんですが、場が進むつれ、そんなことも気にならなくなり、すっかり引き込まれてしまいました。
キチンと歌が歌える人じゃないと、絶対に歌えない歌ばかり。
すごかったです。
アフタートークショウでも言われてたんですが、特にメッキが歌う曲は「それ歌えるんですか?!」な曲ばかりでした。語りっつーか、歌っつーか。
篠原さんも可愛かった。小さくて細くて相変わらず歌が上手くて。
でもって、メッキとポリーのキスシーンとか色っぽくてビックリ。キスなんてぎゃーーーー!!!なんつってたのはそうか…もう10代の頃の話。今、28歳なんですね。
銀粉蝶さんはさすがの歌声。前回彼女を見たのはシティボーイズミックスでした。
まだ正統派な銀粉蝶さんをワタシは見てないということなのでしょうか…。
なかなか猫背さん出てこないなーって思ったら、出てきてイキナリ拍手喝采でした。
素晴らしい。
ポリーとのケンカ具合とかカラダを張った笑いとかさすがでした。
吉田栄作さんはとにかくカッコいい。
無駄のないカラダ、颯爽とした身のこなし、歌も上手いし、なんかビックリ。
すいません、昔のテレビドラマに出てたイメージしかなかったんで、いつのまにこんなにカッコよく!とビックリ。
ステキな俳優さんになられたんですね。
で、今回のワタクシの最大の目当てである、ROLLY。
のっけから追い剥ぎにあって、黒のビキニパンツ1丁になって歌ってくれます。
ビックリ。
その後も娼婦達のリーダーのジェニー役なんで、コルセットにハイヒール、タバコ吸う姿が超カッコイイのです。
歌も堪能しました。
ずっとROLLYの歌が聴きたかったんですが、Tommyではそれがちょっと叶わず。
Tommyでも歌ってくれてるんですけど、ちょこっとだけだったので…。
今回は堪能まくりでした。
白井さんの演出とか解釈って、本当に白井さんのイメージどおりというかなんというか、おもしろくて、ちょいハスで、カッコイイ。
ちょっと陳腐な言葉で言えば、美学がある、というかなんというか。
最初はその世界に入れないかも…とトキトキだったんですが、なんとかすがりつけました。
ヨカッタ。
今回はアフタートークショウがあって、白井さんと音楽監督の三宅さん、吉田栄作さんとROLLYの4人がお話をしてくれました。
三宅さんに関して、白井さんが憧れの人としてあげ、お願いしたらオッケーしてくれた!とお話されていて、さすが白井さんセレクトな人だ…と思いました。
そのアレンジって、完全に歌う人の力量を計るっつーか、歌う人のことは考えていないっつーか。
それでいて、歌がピタっとハマると不思議な素晴らしさがありました。
でも、歌いにくそう(笑)
ROLLYがトークショウで、毎回毎回ちょっとずつアレンジが変わってて、その度に頭の横に吹き出しで「ぎょえ」って出るんですけどそれをわからないように冷静な顔しながら、毎回毎回「ぎょえ」って思ってます。と言ってましたが、ホントにそんな感じ。
聴いたこっちも「ぎょえ」でした。その「ぎょえ」を「うぎゃ」←だったかな… という驚きに変えたくてがんばったそうです。
訳詩についても語ってくれました。
お話頂いて、取り組むものの半年くらい聴きたくなかったくらい難しかったそうです。
英語じゃなくて原語がドイツ語。でも、よく訳詩にある仰々しい歌詞とかそいうのにはしたくなかったので、空耳アワーのように聴いたそのままを大切にしたそうです。
楽譜をもらって譜面から起こすと、これまた、ワザとらしい歌詞になるので、今回は耳で聴いたままで書こう!と譜面なしで書く!と思ったらしいのですが、よく考えるとそれをするためには全曲覚えなければならないことに気付き、必死で聴きまくって覚えたそうです。
で、パンフにも書いてあるんですが、ポリーとルーシーのケンカ場面の罵り合いの歌で「ダサいす、ダサいす、だす」と聴こえたのを機に一気にできたそうです。
ジェニーの歌は比較的、演奏をちゃんと聴いて歌える人であれば歌いやすい曲ばかりだったのに、オープニングのメッキのテーマのアレンジがものすごく「ぎょえ」っと思ったそう。
初めてそのアレンジを聴いた吉田さんもこっそり「ムリだよね」って言ったくらいだったそう。
白井さんは金曜日を最後に東京に戻られ、芝居を見届けるのは最後らしく、三宅さんにその後を託されていました。
ステキなお芝居でした。
そして、大人ななお芝居でした。
悪は悪として存在してもいいんじゃないの?
結局、正しいことが最後に勝つ世の中じゃないんですよ。
そんな言葉が聞こえてきそうなお芝居でした。
おもしろかったー。
そして…。
ああ、血の婚礼見に行けばよかった_| ̄|○
と改めて後悔でした…。
とほほ。