ユニコーンやら電気グルーヴやら筋肉少女帯やらSMAPやらお芝居やら

座頭市。

2007年12月20日・12月22日 梅田芸術劇場

原作:子母沢寛

演出:三池崇史

脚本:NAKA雅MURA

音楽:遠藤浩二

出演:

市:哀川翔

八:阿部サダヲ

朱太夫:麻路さき

竜之介:遠藤憲一

吾六:長門裕之 ほか

 甲州街道沿いの宿場へ、賑々しく楽を奏でながら、朱太夫という美貌の女座長率いる旅芸人の一座がやって来る。二年ほど前、旅の途中で山賊に襲撃されて一座の大半が殺され、その当時は歌い手の一人に過ぎなかった朱太夫が、自らが座長となり復活させた一座である。と、朱太夫が巨大な市の手配書を認め、驚く。朱太夫は、かつて市と旅の途中で出会い、すれ違いにちょっとした付き合いを持ったことがある。朱太夫はいつの間にか賞金首となってしまっていた市の身を案じる。

 一方、とある町の鉄火場には座頭市がいた。いかさまを見抜いた座頭市は、チンピラに追われていた。そこに一人の浪人・竜之介が割って入る。竜之介の見事な太刀捌きで、その場をしのぐ。言葉を交わす二人。この竜之介という人物は、なかなかの人物のようである。竜之介もまた、座頭市のただならぬたたずまいに魅了される。その光景を見ていた琵琶弾きの八が、座頭市に声をかける。八は耳の聞こえない琵琶弾きであった。盲目の座頭市と耳の聞こえない八は意気投合し、次の宿場町までの旅を共にすることにする。鉄火場のある町を後にした座頭市と八は次の宿場町への道すがら、朱太夫の一座と遭遇するのだが……。

自力で取ったチケットといけなくなった友から譲り受けたチケットで2回みました。

いやもう、友に感謝。自力チケは18列の一番端。友チケは3列中央。

友チケのおかげで楽しめました。

翔さんの市はずっと目をつぶっての演技。

たまにセリフ噛み噛みでした。22日のほうが多かったかな。

でも、シャイでチャーミングで世捨て人のように生きようと言う感じ。

最後の殺陣まで抑えて抑えての演技でした。

市はきっと内に熱いものはあるんだけど、自分が座頭である故にイロイロと我慢しなければならないことが多くて、そのために自分の感情も抑えちゃったのかなあという気がします。

阿部さんの八。八は耳が聴こえない琵琶弾き。

遠くから見てたときはそんなに気付かなかったのですが、前で見たときはずっとちゃんと人の口が見える立ち位置でずっと相手の口元を見てセリフを聞いていました。

阿部さんがいることでテンポとリズムが出来てる感じ。

いやもう、ありがとう阿部さん、という感じ。

エンケンさんの竜之介は至極マジメな浪人。

マジメ故に自分の感情に折り合いがつかず、暴走してしまった人という感じ。

本当はとてもいいお侍さんでいるハズだったのに…と。エンケンかっこよすです。

カッコイイ&ちょっと情けない、そういう感じがとてもステキでした。

麻路さんの朱太夫。市と竜之介を繋ぐ役でお話の展開のカギな人。

まだ女リハビリ中な感じは否めませんが(笑) 声はやはり通る人だなあと。

メイクとかヅカ和モノだったし。もともとガッシリした男役さんだったので、ガッシリした姐さんでした。気っぷの良い姐さんだったんで、よかったんじゃないでしょうか。

長門さんの吾六。墓掘り人夫として町の人たちからは虐げられてる人。

はじめて長門さんの生演技を見たのですが、これがもう、すっごいチャーミング。呉六もまた内に秘めるものはイロイロあるんだけど、なんかこう…抗う事を諦めようとしてる人で本当はイロイロ言いたいけど「いい人」でいようとしてる人。いや、いい人なんですが。

市が憧れる人なんですが、憧れるだけの人だなあと思うくらいに存在感ありました。

市は朱大夫にちょっとホの字、朱太夫は竜之介が好き。竜之介は朱太夫のことが気になるクセに朱太夫にはちょっとツンツン。

市は呉六の生き方・人生の受け容れ方に憧れてる、八は市の生き方・実力に憧れてる。

お話としては、前に見た薮原検校に通じる「差別されてる人達の秘めたる怒り」が潜んだお話でした。

が、長い。なんつーか、長い。

三池さんってのは映像作家さんであって、舞台演出家ではないのかも…という感じでした。

同じ尺でもきっと映像でアップだったり引きだったりのカット割りありで見せれば飽きないんだろうなあっていう場面も舞台なのでそういう変化がなく、ただ単調になってしまう…という。

もっとタンタンタンと進んでよかったんじゃないかなあ。

あと、ジャンゴにも通じる「おもしろいことをおもしろいよって言いながら言う」ってのもあったかなあ。どっちかっていうとおもしろいコトはあっさりと言って欲しいタイプなので、そのへんが気になりました。

お話もとっちらかりすぎかなあ。朱太夫の話と呉六の話が上手くシンクロしてくれればいいんですが、なんだかパッキリ別系統の話になってしまったためにお話がバラバラな印象。

八が間でムリクリ繋いでる感じがしました。

などと、偉そうに描いてますが、根底の呉六の叛乱という部分は好きなのです。

市が憧れるくらいに「出来た」人だと思っていた呉六も実はいろんな思いを秘めていて、市が思うほどに達観できてなかった…という部分がとてもよかった。

市は呉六のことをホントに達観した人だと思ってたので、呉六の苦悩に気付く事ができず、それを悔いてるのもなんかよかったです。

八は市が呉六に憧れるように市に憧れを抱いてるけれど、ちゃんと市の悩みもわかってる感じがして、だからこそ、市に呉六を切っちゃいけないって言ったのかもしれません。

最後、呉六から堰を切ったように溢れ出る、いままでの思い。これがとてもよかったです。

市の殺陣もよかったけど、自分的には呉六の場面かな。

市も驚くほどに今までずっと我慢し続けてきた呉六の思いがぶわーーーっと溢れて、ギューンときました。

ただ、よかった…と思えたのも、友チケで3列で見れたからもしれません。

俳優さんたちの細かいお芝居とか見れたし、迫力もあったから。

18列のときは途中耐え切れず意識が飛んだところがあったので…。

あと、熊吉のセリフが何言ってんだアンタ?っていうくらいわからないところがありました。

18列でコレだったから、ふとやってきて、1階後ろと2階とか座っちゃったらかなり辛かったかも。←俳優ヲタさん以外は

単調な中での救いは阿部さんと双子でした。

双子がピエロみたいな役回りでクスっとさせてくれて目が覚めたり、阿部さんの絶叫で目が覚めたり。

男色家な熊吉に狙われ、酔わされてグダグダな八は可愛かった。←貞操は守ったけど(笑)

エンケンの世捨て人な感じもよかったなあ。世捨て人なんだけど、実は世を捨て切れない人って感じがよかった。

三池さん、好きなんですが餅は餅屋なのかもしれません。