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カリギュラ

2007年12月05日 シアターBRAVA! 19時開演

作:アルベール・カミュ  翻訳:岩切正一郎

演出:蜷川幸雄      音楽:朝比奈尚行

美術:中越 司      照明:大島祐夫

音響:鹿野英之      衣裳:小峰リリー

ファイトコレオグラファー:國井正廣

ヘアメイク:佐藤裕子

カリギュラ:小栗 旬

シピオン:勝地 涼

ケレア:長谷川博己

エリコン:横田栄司

セゾニア:若村麻由美

ローマ帝国の若き皇帝カリギュラは近親相姦の関係にあった妹が急死した日、宮殿から姿を消した。貴族たちに不安が広がる中、3日後にようやく戻ったカリギュラは、驚くべき宣言を出す。貴族、平民を問わず、資産家を順次殺して財産を没収する———それは、ほんの手始めだった。相次ぐ処刑と拷問、貴族の妻を略奪し公営売春宿で働かせる、市民のための食料庫を閉鎖して飢饉を起こす、神に扮装して神々を冒涜する・・・。残虐非道な行為の数々にローマは恐怖で震え上がった。常軌を逸したカリギュラを誰もが恐れたが、愛人のセゾニアは愛ゆえにカリギュラに協力し、非情な女に徹する。17歳の詩人シピオンは父親を殺されたにも関わらず、カリギュラの中に純粋さを感じ取り、心ひかれていく。平穏な生活を求める貴族ケレアはただ一人、カリギュラの思想の危険さを見抜き、クーデターの時期を計り始めていた。「不可能なものが欲しい」、カリギュラの不可解な情熱は、暴走し続け、やがて自らを滅ぼしていく。

引用元:Bunkamuraサイト

いやはや、どえらく難解なお話でしたよ。

初・生オグリッシュだったんですけど、もうね、お話を追うだけで精一杯。

オグリくん(*´∀`) という気持ちだけで行った人は面食らうんじゃないかなあ。

さすが蜷川さん(笑)

パンフにもあったんですが、まずオグリッシュありきな舞台だったような気もします。

実はあまりオグリッシュのことを知らず、あげく、ドラマとかも見てなかったんで、どんなかなって思ったんですけど、舞台の上の彼は素晴しかったです。

難解な苦悩を演じ切ってたです。

ちょうど予習に情熱大陸を録画して見たんですけど、舞台の時期と殺人スケジュールが合致してて、その大変さが上手く演技に乗ってたんじゃないかと…。

忙しくなればなるほど、悩みは個人的になって、孤独だったんじゃないかなあ。

そして、この舞台で勝地くんにフォーリンラブですよ(笑)

犬顔でなんだこの人!って思った勝地くん。←恋の予感

今回はシリアスな舞台の中でとてもよかった。

まっすぐな感じがとてもよかった。

セリフも聞きやすいし、またどこかの舞台で出会えるといいなあって思いました。

でもって、舞台で見て考えがあらたまった女優さんその2、若村麻由美さん。(その1はこの間の寺島しのぶさん(笑))

ドラマ白い巨塔の財前の妻役がステキだったんですが、この舞台での若村さんがホントにステキ。

すっとした佇まいと力強さと優しさと。そんでもって、声がよく通る。とてもセリフが聞きやすかったです。

すばらしい。

横田栄司さんにも惚れました。すっごいイイ声だし、ホントにカッコヨスでした。

斜に構えた感じでいつも居て、押さえた感じの演技だったのですが、カリギュラに対しての忠誠というかなんというか、そういう感じがとても表れててステキでした。

奴隷ってきっとその命は主人である貴族たちの気まぐれな言葉ひとつでどうにでもなったと思うので、カリギュラの行動に対して震える貴族たちが滑稽に見えたと思うのです。

そんな奴隷生活から自分を救い出してくれたカリギュラ

彼に対する忠誠心、心配しながらも、決して踏み込みすぎないところがいいのです。

すばらしい、すばらしい、言ってますけど、いや、ホントにすばらしい。

トーリーは難解で、理解したのかと問われれば、どうだろう…という感じなのですが。

愛する者を失ったカリギュラは本当に孤独になってしまい、自虐に走ったんじゃなかろうか…という理解です。

自虐に走り、止まらない自分を止めて欲しい。

自分から止めることはできないから、誰かに止めて欲しい。

その止める役がケレアだったのかな…と。

ケレアは自分たちの生活を守るためクーデターを起こすけど、きっと、カリギュラの苦悩とどうすることもできない感情を見抜いていたような気がするのです。

信じられない政策を打ち立て、残虐な圧政に走るカリギュラのことをなんとなくわかってたんじゃないかと思うのです。

だから、感情的にならず、理論的に物事を進めようと思ったのではないかと思うのです。

そして、シピオン。

父親を殺されてもなお、カリギュラに傾倒する人。

カリギュラが負の世界にいるとしたら、正の世界にいるカリギュラはシピオンのようだったんじゃないかと思います。

詞や思い描く世界が似てるのは多分、根っこが似てるんじゃないかなと。

シピオンが魅かれるのは、同じ世界を持つ人であり、自分にない強さと脆さを持つ人だと感じたからなんじゃないかなあ。

セゾニアは献身的にがんばったけど、カリギュラはシピオンのほうを愛してたような気がします。

半身として愛してたんじゃないかなあ。 ←恋愛とかそういうレベルの愛でなく

あんなに献身的だったセゾニアだけど、カリギュラの中には妹の存在が大きくて、それは死んでしまったからこそ尚、大きな存在になってて、それには絶対に勝てない感じ。

それでも、自分に愛を注いでくれるセゾニアに対して、カリギュラはいい人だったような気がします。

やってることは残虐だったけど、基本的には真面目そう。

真面目な人だからこそ、常軌を逸した感じが痛々しいんじゃないかなあと。

カリギュラが最後のほうに、妹の死を忘れてしまうのはなんたら〜みたいなことを言ってて、なんつーか、死を忘れて自分が幸せになってしまうことは妹への愛が薄れてしまうことなんじゃないかと恐れてるのかしらと思ってみたり。自分が幸せになることへの罪悪感っつーんでしょうか。

常に死を側に置いておくことで、妹への愛を貫いてる…って思ってるのかなあ。

最後、殺されてしまったとき、カリギュラはちょっと幸せだったかもしれません。

やっと止まることが許されると思ったかも。

2階席だったのでオペラグラスでガン見しました。

オグリッシュの目がすごかった。

とくにラストシーンなんか鬼気迫ってました。

相変わらず、舞台デザインがステキで、すべてが鏡張りになってるところは、いくつもの自分がいるって暗示なのかしら…と。

最後にガラスを割ったカリギュラは虚像を壊して、自分に戻ったのかしら…とか。

この2階席がまた「カリギュラ様は観客までをも試されてるのでしょうか…」と泣きたくなるくらいに暑かった。

ホントに暑かった。

おかげで、寝てる人続出。ワタクシも不覚ながら3回くらいもってかれました_| ̄|○

あれはどうにかしてあげたほうがいいと思います。

2階だけでも冷房を!

隣の人なんかずっと寝てて、観てたんだろうか…っていうくらい寝てて、なのにスタンディングオベーション。不思議でした(笑)

オグリッシュファンの方々多数だったと思うのですが、そこでのカリギュラ

蜷川さんステキス。

本当に忙しすぎる中での舞台で追い込まれるオグリッシュカリギュラが重なってステキでした。

パンフに稽古中に藤原竜也くんが見学に来て、緊張するオグリッシュと書かれていました。

やはり、蜷川+藤原って組み合わせは強力なものなんだなあって思いました。

パンフの蜷川さんのインタビューに藤原くんのハムレットを観たあとにオグリッシュハムレットを演じることができなくて忸怩たる思いを抱えたと思うとあって、そういう気持を持てる人だからこそ、蜷川さんは彼をもっと舞台の中心に置きたいと思ったんだろうなあと思いました。

いやー、もっと舞台でのオグリッシュ、舞台での勝地くんを観たい!と思わせてくれた舞台でした。

ずっと険しい顔のオグリッシュでしたが、3回目のカーテンコールの後、舞台そでで頭を下げたあと、ちょっとはにかんだような笑顔で手を振って去っていきました。

魂打ち抜かれた人多数だった模様(笑)